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・辿りつく 先には・
第6章 『狭間』
すっぽりと包まれ、こんなにも安心をしたことがあっただろうかとそう思った。
音が消える。

涙が止まるまで頭を撫でてくれていた。落ち着きを取り戻したのを目にして、声が降り注ぐ。

「今度も 僕が我慢できへんくなるわ。絢音を抱きしめたら、離せない。」

それに漸く笑う事が出来た。そして今いる場所を思い出し、ハッとする。

「声、漏れてなかったかしら…」

「漏らさんよう、したから。息くるしゅうさせてあかんかったけど。」

「もうっ。早く出ないと。誰かが着たら大変。」

そっと離れた、顔から火が出てしまいそうだった。先に出ててと言われ、そっと開けて回りを見てからさっと何事もなかったようにを装った。

少ししてからNも普通の顔で、出て来て二人は顔を見合わせ笑いどちらともなく手を繋いだ。

「時間 大丈夫?」

「大丈夫、それはちゃんと見てるよ。」

それにもちょっと苦笑してしまった。あまりの素早さに呆れるやら感心するやら…

「絶対、沢山の女性と経験してそう…」

「それは今度こそ、純粋な焼きもち? だと嬉しいなぁ。」

「褒めてませんっ。さぁ支度して~まだ驚かされる事はない?」
それに今日一番の悪戯っ子のような顔をした。

先程のカードキィを、ポケットから出す。

ひらひらと目の前に一枚。もうお手上げといった諦め顔の絢音。

「部屋を行き来したりしてるの、面倒やろ思うたからや。喜んで絢音、そんな顔じゃなく。」

肩を引き寄せられるのをちょっと遠ざけてから言った。

「聞かなかった私も悪いから、すっかりシングル二つだって疑わなかったもの。もう聖ったら、いつもそんなに強引ばかり?」

頭にキスを落とす。身長差がありすぎて、そのカードも取れない。

「絢音だから、そう言ったよ。スーツのネクタイ、選んでや。頼むわ。」

それにはちょっと笑った。今度は絢音の番だった。

「それだけは私が、何かどうしてもお礼がしたかったから。ネクタイ、プレゼントに選んできたの。」

それに思いの外、喜んでくれた。

「おおきに、それは楽しみやわ。センス良さそうやもんね。」

「お仕事柄です。聖の真似。確かに二部屋でいちいち出たり入ったりは ちょっと大変だったかも。」
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