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・辿りつく 先には・
第10章 『夜伽』
あの後は少しばかり夜景を楽しんで、疲れたであろう聖の為に 帰りもタクシーに乗る事にした。

タクシーの中では、今度は私ではなく聖が私の肩に頭をもたげていた。

「少し、休ませてな。」

「やっぱり、夜になったら疲れが出て来た?お酒も入ったし…ホテルまで眠って。」
「そうするわ、着いたら起こしてな。本当は絢音をずっと見ていたいやけど。」

「いいから、目を閉じて。」

握り締めていた、手に力を入れた聖。夜は本当に苦手だった。闇が自分を取り巻くと、不安が拭えない時があり眠れなくなるのだ。それが鬱のもっとも辛い時だった。

だが、今は絢音の香りを感じてすーっと眠気が来たのでおとなしく言い分を聞いた。

眠る顔を目にして、心は楽しみを味わっても体が着いて行かないのを良く理解した。

自分が経験しなければ、分からない事だった。

今だけでも、自分がこの人を守ってあげれているのだと思いたかった。

あんなに色々な思いをさせられたのに、昔から本当に男性には尽くして来た。

愛してしまうと、全てを投げ売ってまでも…

優しい気持ちで、手を撫でてあげる。だがその指先を目にして、ズキンとまた下半身が反応をしてしまう自分を感じた。

先程の事を思い出すと、直ぐにも心に火を付けられそうで 今は眠ってくれていて良かったとそう思った。

でなければ直ぐにでも、心内を感じ取られていただろう。

ほっと胸を撫で下ろす。見つめ続けられていない時が、こんなにもリラックス出来ると知りちょっと苦笑いをした。

私の身体と心は一体どうなってしまったのだろうと思った。
今まで本当の意味での、愛を知らなかったのかもしれないとさえ本気で思った。
自分だけがただ、ひたすらに愛を追いかけ一方的に気持ちだけを相手に打ち付けたのかもとも。

だが、どうする事も出来なかった。

愛される絶対的な、安心と幸せをたった一日で私に与えてくれたこの人を 愛さないはずは無かった。
だがそれを口にしたと同時に全てはまるで泡の様に水に溶け消えてしまうような気持ちがした。

駅が見えてきた、考え事の波が打ち寄せては消える。

まるで海の波の満ち引きのように…
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