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・辿りつく 先には・
第10章 『夜伽』
「聖、もうすぐ着くわ。起きれる?」

ゆっくりと目を開けた。二、三度 瞬きをする。体を起こして背もたれに頭をもたげ繋いでいない方の手で眼鏡を外した。
それを受け取ってあげケースに入れ、鞄にしまう。まだ意識が、朦朧としているらしかった。

「大丈夫?つらい?」

もう一度ぐらりと、肩に頭はのせられた後 見上げられた眼鏡のない瞳にぎゅっと手に力が入ってしまった。

それを感じて、いつもの笑みが目の中に入ったと思ったら繋いでいない手がぐっと伸び頭を引き寄せられあっという間に唇を食べられた。

片手で聖の胸を押しても、離してくれる訳が無い。二、三度 強く唇がなぞられるように奪われる。心から、根こそぎ持って行かれるようなキスに魂はずきずきと
反応した。

最後の降ろす場所を聞かれ、漸く身体を離してくれる。

「はい、そこで大丈夫です。ありがとうございます。」

かろうじて震える声をごまかし、答える。

降りてから、ちょっと言おうとしたが聖の顔を目にして言葉が変わってしまった。

ホテルの中からの光りにあたった顔色が、あまり良くない。手を握り締めていた、体温も低かった。怖くなって腕にもう一方の手を添える。

「具合悪い?手が冷たいわ…大丈夫、聖?」
あんなに話していた言葉が聞けないだけで、不安が波紋の様に広がった。

ぽんぽんと頭を撫でられた。見上げた瞳を目にして、か弱い笑みを浮かべた。あの余裕の笑みの魔王と、今の聖のどちらが本物なのだろうと思った…

「心配そうな顔せんでええ、夜は苦手なだけや。不安が胸をうめて、でも今日は絢音がいるから。大丈夫じゃない時に、大丈夫は言えへんけどな。少し疲れただけや、部屋で休めば治る。薬も、持って来てるし。」

「無理はしないでいいから、そうよね大丈夫って聞いてごめんなさい。」

「あやまらんといて、心配してくれたんやから。早う、上がろう。立ってるのがしんどい…」

足早に二人はホテルに入った。
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