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・辿りつく 先には・
第10章 『夜伽』
自分自身が悪魔と契約を交わし、人を喰らい魂を得て残虐なまでの深い深い愛で女達を手に入れて来た。

そして堕ちる姿を目にして、満足し飽きると捨てた。

女は自分の苦しみを癒す道具であり、自分の快楽を満たす物でしか無かったのだ。

過去の傷が、魔王を作った。

絢音はそんな恐ろしい事を、知らずに胸の中でその無心な愛を感じていたのだった。指が背中をはい上がる。

緊張が一瞬にして、立ち込める。空気が変わった。聖の持つ、オーラが一回り以上も大きくなったのを分かり離れたくてもがいた。

「駄目、離して 恐い聖。いや…」

「言うたろ、離せへんって。絢音は僕の奴隷になるんや。」

「ならないって言ったわ。」

「命令に逆らうなら、腕づくでも 魂を貰う。」

「そんなの本当の愛じゃない。」

「本当の愛が見たいんなら、俺を愛してるって言うてみ」

俺と言われ、瞳を見つめた。そこには僕であった優しい聖は微塵も感じられなかった。

身体中から放たれる力に、押し潰されてしまいそうだった。
薄明かりの中、身体はとうに聖の腕下にされていて上から完全に覆い被せられ 手をついた中に閉じ込められていた。

足と手 そして二つの双眼 六つの杭が私を完全拘束した。

本当の調教の始まりだった。

瞳を反らしたら、喰い殺されてしまうのではと思う間合いが恐くて 目を逸らす事が出来ない。

身体が固まり、心が口から魂を吸い上げる。

「愛してる、絢音。俺を感じて。」

口からどんどんと魂が上がり、言葉は引きずり出されそうだった。つらくて、つらくて堪らなかった。言葉は尚も降り注がれる。まるで呪文だった。

「今までの中で最高に美しい奴隷にしたる。絢音には感覚で全てが分かる。二人切りの世界だ。他の誰にも、そこへ行く事は出来ない。絢音、見たいやろう。心がそう言うてる。」

声が震えながら、口から漏れた。無理矢理、出された声。感情とは裏腹に、脳が聖の命令に従わせる。洗脳だった。

「見た…い…」

それに、冷淡な笑みは浮かんだ。

「ええ子や、絢音。深い深い海に潜り、高い高い空にもなれる。愛してる、愛して 愛してやる。絢音、お前は美しい。」

首筋に唇が触れただけで、全身の血が全てに指令を与えたように身体は瞬間点火され 炎に包まれた。
正に炎の魔王、N。聖の宴が幕を上げた。
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