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残像
第1章 悪夢
「…っはっ…!」
目が覚めて、飛び起きた。
冷たい汗で全身が濡れている。
ふと、隣を見る。
暗闇の中、ではあるが、対面の格子窓から差し込む控えめな月明りが、僅かに室内を照らす。
妻のサチと、息子の市八が、すうすうと寝息を立てて眠っていた。
思わず口を手で覆い、溜息を捨てる。
…嫌な夢を見た。
もう、とうに忘れたと思ったのに。
二人を起こさぬよう、そっと布団から起き上がり、土間に置いてある水瓶に向かった。
そろそろと蓋を開け、柄杓で水を汲む。
ぴちゃり、という微かな水音ですら、二人を起こしはしまいかと気を揉みながら、柄杓でゆっくりと水を飲み、喉を潤した。
ほう、とひとつ息を吐いて、柄杓と蓋を音を立てぬように戻し、布団に戻る。