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残像
第6章 初恋
女は、名を、赤猫、といった。

市九郎に、「俺の女だ」と紹介された時、八尋は思わず息を呑んだ。

顔の右側に酷い火傷の跡があったからだ…
が、話してみると声は可愛らしい。
左側に立って横顔を見ると、物語の天女とはかくや、と思うほどに、美しかった。
涼しげな眼もと、白いうりざね顔、唇は紅をささずとも赤く椿のようで、こんな女性は見たことがない、と思うほど。

それなのに、火傷のせいで化け物と呼ばれ、一人夜盗をして生きてきたという。
市九郎は、誰に対してもそうなのだ。

化け物と呼ばれ、女として、人として扱われてこなかった赤猫に女として接し、慈しみ、女の悦びを教えてやったのだろう。
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