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残像
第2章 記憶
目が覚めたとき。
八尋は下腹部に鈍い痛みを覚えた。

いつもとは違う。
行為の後、痛むのは後ろだ。

痛む位置が違うのは判った。
時とともに、鈍い痛みは徐々に鋭さを増し、錐で突かれるような痛みに変化した。
痛みから逃れたいのに身体が重くて動かない。

目だけで痛む箇所を確認しようとすると、赤子のように襁褓(むつき)を当てられているのが見えた。
何だこれは…
厠に行きたい、と思っても痛みで思うように身体が動かず、仕方なくそのまま出すしかなかった。

不快感と痛みを訴えると下女がやってきて、蔑みと憐みが混じったような複雑な顔で襁褓を換えられた。

八尋は今、十二歳。

通常であれば襁褓を当てられる歳でもないし、女に局部をさらすことにも抵抗を感じるはずだった。

だが彼は、何も感じない。
何かを感じる心など、もうとうに無くしていた…
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