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残像
第7章 別離
屋敷から逃げる直前、市九郎が火縄で撃たれた。

同じ現場には居たが、屋根の上に居た八尋は、一部始終を見た訳ではない。

聞くとその家の幼子が起き出して、家人と間違え市九郎の足に纏わりついたようだった。
市九郎が、声など上げられぬよう何とか穏便に引き離そうとしているときに、手下の一人が焦って子を無理矢理引き離そうと脅した。
それを市九郎が窘め、その騒ぎに家人が起き出した、ということだった。

有事の際には八尋が指揮を取ると決まっていた。
すぐに屋根から飛び降り、状況を瞬時に察すると手下に指図する。

戸板を外して負傷した市九郎を乗せ、四人が担いで逃げる。

己はその先導。
先にアジトに帰って兵衛に状況を伝え、処置の準備をせねばならない。

残った三人は囮。
八尋と市九郎たちが逃げる時間を稼ぐ為、方々で大きな音を立て、追っ手の気を引きながら散り散りに逃げる。
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