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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第2章 【二話】不在で交わされた契約
     □ □ ■

 部屋に戻ると気が抜けてしまったらしい。
 ドアをノックする音で玲那はいつの間にか寝ていたことに気がついた。

「……はい」

 どうにか返事をしたが、声が掠れていたため、寝ていたのが相手に伝わったようだ。

「すみません、出直してきます」

 ノックの仕方でだれか分かっていたけれど、声を聞いて確信した。

「あ……」

 待ってと言おうとして、玲那は声を飲み込んだ。
 寝起きのこの状況で引き止めてどうする気なのだ。

「一時間後に出掛けますので準備をしておいてください」
「え……」
「それでは、お待ちしております」

 ドアの向こうの景臣は意味深な言葉を残すと足音をわざとさせて去っていった。
 そうなのだ。
 景臣は普段は足音をさせないばかりか気配さえ消しているというのに、こういう時に限って存在をアピールして足音を残して去っていくのだ。
 普段は意識しないのに、そうされると忘れようとした景臣への恋心を意識してしまう。そういう気遣いがひどく心苦しさを増長させた。
 景臣の気配がすっかり消え去ってしまってから玲那はのろのろと動き始めた。
 時計を見るととっくにお昼を過ぎ、夕方になっていた。カーテンの隙間から差し込む日差しも心なしか色づいてきていた。
 思っていた以上に眠っていたことにも驚きだが、今から出掛けるとはどういうことなのだろうか。
 質問をしたくてもここには玲那しかいない。
 景臣に言われるがままに軽くシャワーを浴びて着替えて化粧をし終わる頃、予告通り、景臣は迎えに来た。
 ドアを開けると、なぜかタキシードを着た景臣が立っていた。

「景臣さん……?」

 いつものスーツもいいけれど、タキシードも似合うだなんて思ったけれど、それよりもどうしてタキシードを着ているのだろうか。

「お迎えにあがりました」

 混乱する玲那をよそに、景臣は甘ったるい笑みを浮かべていた。
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