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第27章 【二十七話】服従させることが悦び

　景臣からはやはり少し馬鹿にしたような返答が返ってきたが、想定していたことだった。

「わたしは、筒宮の血の器ですから」
「……器？」
「筒宮の血を、後世に繋ぐための、そのためだけの存在なのだそうです」

　いつもなら景臣からなんらかの反応があるのに、今回はなにもなかった。
　なにか気分を害することを言ってしまったのかとちらりと景臣を見ると、いつも以上に表情がなかった。
　それを見て、なにかよく分からないけれど、景臣を怒らせてしまったらしいということだけは分かった。

「あの」
「……あなたは」

　景臣の声がいつも以上に低い。
　相当怒っていると知ったけれど、玲那はどうすればいいのか分からなかった。

「あなたは、それでいいのですか」
「──え？」
「なるほど、これは面白くない」
「面白くない……？」
「俺は確かに、だれもが羨む人形がほしかった。だけどそれは、本当の人形ではなく、俺に反発して、だけど俺に服従しなくてはならなくて、屈服するのが悔しくて反発するような相手でなければならない。そういう反抗的な者を人形のように扱い、悔しがる姿が見たい」
「…………」
「あなたは俺がなにをしてもなにも言わず、受け入れる。それはつまらない」

　夫となる者には絶対服従をしなさい、と言われて育ってきた身としては、景臣に反発するという考えがそもそもない。
　ただ、玲那にも玲那なりの矜持（プライド）があるから、そこが侵されそうになれば、抵抗はする。
　とはいえ、景臣の言うことはかなり歪んでいるように思えた。

「俺はあなたと本当の人形遊びがしたい訳ではない」
「…………」
「色んなことに免疫がなさそうだからと遠慮していましたが、その必要はないと」