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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第28章 【二十八話】碧く深い海
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 景臣が少し遠いと言っていた割には、すぐに高速道路から降りた。一般道路に入るとのろのろ運転になり、遅々として進まない。

「遠いと言うから、もっと遠くかと思っていました」

 さすがに気詰まりになったために玲那は思ったことを口にした。

「……遠いですよ」
「え」
「遠いどころか、もう社長とお会いすることができなくなります」
「…………」

 そう改めて言われてしまうと、そうであるのだが、景臣がそんなことを言うとは思わなくて、玲那はなにも返せなくなった。
 そのことについて景臣はどう思ったのか知らないが、玲那から反応がなくても続けた。

「最初、連絡があったときは、社長のリクエストにあったような海が見える火葬場に空きがないから少し遠い場所だったのです。ところが、出掛ける前に場所が変わったと連絡があったのです」
「……そう、だったのですか」
「社長のご遺体はすでに斎場に着いているそうです。次が詰まっているから俺たちの到着を待たないで火を入れると聞いていますが、この様子だと、間に合いそうですね。最後に一目、社長を見ておこうと思います」
「……はい」

 玲那が見た道弘の生きている最後の姿は、玲那を押しのけてシャワーに向かうところ。服も髪も乱して去っていく姿を思い出す度に、後悔に似た苦い思いがわき上がってくる。
 もしも玲那がそのときに異変に気がついていれば、道弘は死なずに済んだかもしれない。
 そう思うと、苦しくて仕方がない。

「社長は最期に、なにを見たのでしょうか」
「…………」

 そして次に見たのは、シャワーに打たれ続けた道弘の背中。なにを見たのかは、分からない。

「だけど」

 と景臣は小さく息を吐いた後、続けた。
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