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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第28章 【二十八話】碧く深い海
「自宅であったら淋しく孤独死だったでしょうけど、あの日、あなたが側にいたから……社長はきっと、淋しくなかったでしょう」
「…………」
「穢しても穢されない高嶺の毒花の毒にやられて死んだ。──ある意味、社長が羨ましいですね」
「なっ、なにを……!」
「俺もせいぜい、あなたに殺されないようにしますよ」
「わたしは……!」
「殺すのなら、籍を入れてから……ですか」
「なっ」
「あなたの実家はお金に困っていた。社長の資産は相当あると聞いています。社長のことですからしっかり遺言書はあると思いますが、なかったとしても、籍を入れていたのなら、あなたは社長の財産を半分はもらえますよ」
「……半分、ですか?」
「全部もらえると思っていましたか?」
「いえ……。そんなこと、考えてもいなかったです」

 思ってもいなかったことを言われ、玲那は戸惑った。
 景臣は玲那の反応にどう思ったのか。

「社長は離婚されていますが、お子さまが二人いらっしゃいます」
「……先日、お会いしたお二人ですよね」
「えぇ、そうです」

 二人のことを思い浮かべ、それと同時に投げつけられたひどい言葉も一緒に思い出した。

「遺言書の有無は俺には分かりませんが、あの人のことだからきっちりあるとは思いますが、ないという前提でお話ししますね」
「……はい」

 あの人、というのが景臣の父のことだろうと玲那には分かったが、それにしてもどうしてこんなにも棘のある言い方をするのだろう。

「人が亡くなった場合、その人がかつて持っていた財産は基本は身内で分配されます」
「……はい」
「先にお断りしておきますが、財産と言っても、マイナスの場合もありますが、社長の場合はその点は心配しなくてもいいでしょう」

 それは玲那の両親のことを指しているのだろうかと思ったが、今、その話をするとややこしくなるので、黙っていることにした。

「被相続人──今回は山浦道弘となりますね、が亡くなりました。葬式などのもろもろの処理が行われた後、遺言書の有無が調べられ、そして相続人の確認がされます」
「……はい」
「遺産がどれだけあるのかも調べられ、相続人に知らされます。そこで、相続人はそれらを相続するか、放棄をするのか選択しなければなりません」
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