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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第3章 【三話】『生きる』意味
     ■ □ □

 玲那は訳が分からないと思いながら、景臣に誘われるがまま筒宮の屋敷を出た。
 景臣の運転する車に乗って、しばらくしてからようやく口を開く余裕ができた。

「あのっ、景臣さん」
「はい」
「これから、どちらへ?」

 玲那の質問に、景臣は目の端で玲那を確認しながら口を開いた。

「どこに行きましょうか」

 目的があって車を走らせていると思っていたのだが、どうやら違うらしい。景臣の答えに、玲那は思わず目を見張った。
 その反応に気をよくしたのか、あまり笑うことのない景臣の口元が、若干であるが弧を描いたことに玲那は気がついた。
 道弘との結婚が決まり、それから常に玲那の側にいた景臣だが、いつも淡々として、用がない限りは口を開くことはなく、真一文字に結ばれていた。だから玲那は、この人、笑うことはあるのかしらと思っていたのだが……。見間違えかしらと言わんばかりに口元がほんの少し動いただけだというのに、玲那の心臓はうるさいくらいばくばくと言い始めた。
 しかも。

「あなたが望めば、どこにだって行けますよ」

 と甘さを感じるいつもより低めの声で告げられ、玲那の頬は自然と熱くなった。
 景臣の声は玲那にとって理想的なものだというのに、さらには気のせいか甘さを感じてしまい、思わず勘違いしてしまいそうになる。
 だけどそれさえも計算されたものだと知っている玲那は、抱いた想いを振り切るために、首を振った。

「どこにも……行きません」
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