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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第1章 【一話】死体との対面
仕方がないことだって玲那には分かっていた。こうすることでしか手っ取り早く家族を助けられなかった。
だけど、まさか。
「や……や、やぁぁぁっ! だ、だれか来てっ!」
まさか新婚初夜のホテルで、夫となった男が死んでしまうとはだれが思うだろうか。
*
結婚式と披露宴が終わり、夫となった山浦道弘(やまうら みちひろ)から挨拶がまだ残っているので先に部屋に戻っておくようにと告げられた玲那(れいな)はその言葉に従い、部屋に戻った。ようやく一人になれたことにほっとしたが、これから玲那にとってもっとも恐ろしい時間が待っていた。
それが少しでも先になるように無駄なあがきだと分かっていても時間稼ぎも兼ねて湯船に湯をため、それからいつも以上にゆっくりと浸かった。
風呂から上がり、髪を乾かしても戻らない道弘に安堵していたのもつかの間。
乱暴に、そしてせわしくドアが叩かれた。
「玲那っ、おい、いるのかっ、玲那!」
玲那の名を呼ぶ声に怖々と近づいた。
「中にいるのだろう。早く開けろ」
怒鳴り声でドアの向こうの人物が道弘だとわかったものの、どうしてそんなに怒っているのか分からない玲那は怯えながら鍵を開けた。
解錠の音とともに勢いよく開かれたドアの向こうには、ひどく乱れた道弘が立っていた。
数十分前に別れたときにはタキシードをきちんと着ていたし、髪も整髪料で整えられていた。それなのに今は乱れた姿で、顔色もとても悪くて土気色をしていた。
「あの……」
「そこをどけろっ」
道弘は玲那を押しのけて部屋に入ってドアを閉めると、
「シャワーはどこだ」
と聞いてきた道弘から鉄臭いにおいが漂ってきた。不快な臭いに思わず顔をしかめてしまったが、しかし、道弘はそれよりも気になることがあるのか、肩で息をしながら玲那の答えを待っていた。
怒られると思った玲那はなんの反応もない道弘に戸惑いつつ、シャワールームを指さした。
「入ってくる」
「はい」
そしてこれが、玲那が道弘と交わした最期の言葉になった。
だけど、まさか。
「や……や、やぁぁぁっ! だ、だれか来てっ!」
まさか新婚初夜のホテルで、夫となった男が死んでしまうとはだれが思うだろうか。
*
結婚式と披露宴が終わり、夫となった山浦道弘(やまうら みちひろ)から挨拶がまだ残っているので先に部屋に戻っておくようにと告げられた玲那(れいな)はその言葉に従い、部屋に戻った。ようやく一人になれたことにほっとしたが、これから玲那にとってもっとも恐ろしい時間が待っていた。
それが少しでも先になるように無駄なあがきだと分かっていても時間稼ぎも兼ねて湯船に湯をため、それからいつも以上にゆっくりと浸かった。
風呂から上がり、髪を乾かしても戻らない道弘に安堵していたのもつかの間。
乱暴に、そしてせわしくドアが叩かれた。
「玲那っ、おい、いるのかっ、玲那!」
玲那の名を呼ぶ声に怖々と近づいた。
「中にいるのだろう。早く開けろ」
怒鳴り声でドアの向こうの人物が道弘だとわかったものの、どうしてそんなに怒っているのか分からない玲那は怯えながら鍵を開けた。
解錠の音とともに勢いよく開かれたドアの向こうには、ひどく乱れた道弘が立っていた。
数十分前に別れたときにはタキシードをきちんと着ていたし、髪も整髪料で整えられていた。それなのに今は乱れた姿で、顔色もとても悪くて土気色をしていた。
「あの……」
「そこをどけろっ」
道弘は玲那を押しのけて部屋に入ってドアを閉めると、
「シャワーはどこだ」
と聞いてきた道弘から鉄臭いにおいが漂ってきた。不快な臭いに思わず顔をしかめてしまったが、しかし、道弘はそれよりも気になることがあるのか、肩で息をしながら玲那の答えを待っていた。
怒られると思った玲那はなんの反応もない道弘に戸惑いつつ、シャワールームを指さした。
「入ってくる」
「はい」
そしてこれが、玲那が道弘と交わした最期の言葉になった。