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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第37章 【三十七話】交渉
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 景臣に腕を払われてからこちら、景臣の様子がおかしい。
 おかしいといっても言動はいつもどおりなのだが、玲那との距離が半歩ほど遠い。やはりあのとき、玲那から触れようとしたのがいけなかったようだ。
 この関係になる前よりもほんの少し遠い距離は、なんだか心にも前以上に距離が出来てしまったように感じた。

 退院してからこちら、景臣に連れられて外出することが増えた玲那だが、それは景臣が玲那との接触を避けているようにも見えて、一緒に出掛けるのは楽しいけれど、淋しい思いを抱いていた。
 そんな状態なので、最近では景臣は玲那に触れてこない。
 恥ずかしい行為を強要されることがないことには安堵していたが、いつの間にかそれが当たり前になっていた玲那としては、淋しい。
 ……そうやって思ってしまうことに恥ずかしくも思うのだけど、景臣に教えられた身体は、淫らにも甘く疼くことがある。
 手を伸ばせば届く距離に官能を与えてくれる相手がいるのに、また拒絶されたら怖くて、玲那は近寄れないでいる。

 だけど、と玲那は契約内容を思い出して思う。
 この契約の破棄は、玲那しかできない。そう思えば、玲那のほうが立場が強いような気がするが。
 しかし。
 それでも、景臣がまたあの時のように『触るなっ』と言ったら……?

 前に一度あったからといって、また同じことが起こるとも限らない。
 それでも玲那は、今の関係でも景臣とともにいられるのだから……それでもいい。
 道弘が生きていれば、景臣に触れることができず、想いだけを募らせていくことになったのだから、今のほうがずっといい。
 玲那はそう自分に言い聞かせ、少しの淋しさを紛らわせていた。
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