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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第39章 【三十九話】永久就職
 小牧の質問に、景臣はうなずき、もう一枚、別の封筒を取りだした。中から紙が一枚、出てきた。
 それを見て、驚きの声をあげたのは、小牧だった。

「え、なんで離婚届っ? 婚姻届を出したと同時に離婚届を出すの?」
「違う。今回の契約を結んだとき、俺からは契約の解除の申し入れはできないと取り決めしたよな」
「したね」
「俺はなにがあっても、玲那と離婚をする気はさらさらない」
「……へぇ? ふーん、そういうこと」

 小牧はなにか納得がいったようだが、それでもやはり、釈然としないものがあったようで、首を傾げた。

「それなら、これ、要らなくない?」
「いや、要るだろう。契約内容をよく思い出してみろ」
「え……と。玲那さんの身の安全を守るために婚姻関係を結ぶけれど、玲那さんの身の安全が確保できたと判断できたら、契約期間は終了となり、離婚する……と」
「そうだ」
「契約を結ぶ前にも言ったけれど、景臣は一生、玲那さんの身の『安全宣言』はしないということ?」
「そうだ。玲那の身が安全になるということは、俺の仕事がなくなり、食いっぱぐれるということだ」
「……はー。要するに、景臣は玲那さんに文字通り、永久就職しちゃうってことか」
「そうなるな」

 女性が結婚することを『永久就職』ということがあるが、景臣は玲那と結婚することが仕事だと言っている。
 なるほど、そこに齟齬があるのかと玲那は違和感の正体を掴んだけれど、余計に辛い。

「あの人が筒宮さまの面倒を見ると宣言したのだから、玲那の身の安全が確保されれば、玲那が好きなようにすればいい」
「そのための離婚届を今、書いておいて、玲那さんに委ねるってこと?」
「そういうことだ」

 玲那はきっと離婚届を利用しないと思いながらも、小牧に促され、記入と捺印をした。
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