パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第4章 【四話】話し合い

　　　　　■　□　□

　玲那は道弘の死体を思い出し、上手く息をすることができなくなってしまった。それまで自分がどうやって息をしていたのか、よく分からない。
　そう考えてしまったからなのか、ひゅっひゅっと自分の口から音が洩れていることに玲那は気がつき、パニックに陥った。
　自分の口から、変な音が出ている。それを景臣に聞かれてしまったかもしれない。
　そうなるとますます恥ずかしくて、余計に混乱して、玲那は息をすることもままならず、胸元を押さえながら空気を求めて口を開いたが、上手く吸えない。
　そうしているうちに車がいつもより乱暴に止められた。とはいえ、それは景臣にしては、という前置きがつく。
　玲那が息を吸おうと必死になっていると、車を止めて運転席から降りた景臣が助手席のドアを開けた。玲那はそのことに気がついていない。

「玲那さん」

　先ほどまで右側で聞こえていた景臣の声が、なぜか左からしてきたことに玲那は頭の片隅で疑問に思えるくらいの余裕はまだ持っていたようだ。
　うっすらと目を開けて左を見ると、ずいぶんと近いところに景臣の顔があり、どきりとした。

「玲那さん、息を止めないでください」
「────っ！」

　そう言われても、玲那は息を止めているつもりはなく、きちんと息が吸えなくて苦しみ喘いでいるのだ。そのことを伝えたくても、息ができなくて声を出すこともできない。だから違うと首を振った。
　玲那の反応に景臣はなんと思ったのか。

「玲那さん、私に合わせて息をしてください」

　そういうと、景臣は玲那の顔をじっと見つめたまま口を開いた。

「深呼吸しましょう。吸ってー……」

　玲那が吸う行動を取らなくても、景臣はじっと見つめたままだった。

「では、息を吐いてください」

　景臣にそう言われ、玲那は今まで息ができないと必死になって息を吸い続けていたことに気がついた。
　だから言われたとおりに息を吐き出そうとしたのだが、いざやろうとすると、息の吐き出し方を忘れてしまったのか、自分の口から空気が出て行ってくれない。

「焦らないで、ゆっくりとです」