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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第4章 【四話】話し合い
 玲那の焦りを感じ取ったのか、景臣はいつもの落ち着いた声で玲那に言い聞かせるような声音で、耳元で囁いた。
 景臣が声を発したときの吐息と、玲那好みの低くて耳に響く声を聞き取った左耳が今まで感じたことがないくらい熱い。まるでそこが心臓になったかのようにばくばくとし始めた。

「ふーっと息を吐いて」

 景臣が見本と言わんばかりに息を吐き出したとき、玲那の耳に掛かった。
 吹きかけられた途端、くすぐったさだけではなく、ぞくりと背筋を甘く撫でられたかのような感覚に、玲那は首を竦めた。

「玲那さん、聞こえていますか?」

 それまでだいぶ距離があったはずなのに、急に景臣の声が耳の真横で聞こえてきた。
 玲那は顔を真っ赤にしながらうなずくと、景臣の唇が耳たぶに触れた。

「あ……ん」

 玲那の口から甘ったるい声が洩れた。それを景臣はどう思ったのか、もう一度、今度は先ほどよりも強く耳に息を吹きかけられた。

「玲那さん、いい感じで息を出せましたね。もう少し、息を吐き出せますか」

 先ほど景臣の唇が掠めた耳たぶに、今度は明確に口づけられただけではなく、ゆっくりとそして優しく食まれたのが分かった。
 景臣に耳たぶを食まれる度、玲那の口から甘い吐息がこぼれ落ちる。

「玲那さん、息を吐き出すだけではなくて、吐き出したら吸ってくださいね」

 景臣が耳を食むと息を吐き、離されると息を吸う……を何度か繰り返していると、ようやく玲那は息の仕方を思い出した。
 景臣は玲那が最初はぎこちなく、徐々にいつもどおりに息をし始めたことを確認すると、耳の付け根に音を立てて口づけをした後、ゆっくりと離れ、玲那のシートベルトを着け直し、助手席のドアを閉めた。

 玲那の息は落ち着いたが、そうなるといつもどおりになり、いつも以上に近い景臣を意識しすぎて、心臓が今にも破裂しそうなくらいばくばくといっていた。全身が熱いが、特に顔が熱いので、はた目に見ても真っ赤になっていると思う。
 運転席に戻った景臣は一度、玲那の様子を確認したあと、エンジンを掛けて車を発進させた。

「配慮が足らず、申し訳ございませんでした」
「いえ……大丈夫です、こちらこそ、すみません」

 玲那の謝罪の言葉に、景臣は首を振った。

「玲那さんが謝ることはありません」
「でも……」
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