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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第46章 【四十六話】『安全宣言』

そして、と景臣が続けた。
「十朱の事務所で玲那に液体を掛けてきたのも、多香枝さんだ」
「えっ!」
「実は追いかけて、多香枝さんだと分かったんだが、あえて逃がした」
「なんでですか!」
「多香枝さんの真意が分からなかったからだ。あの脅迫状の文言は凶暴的なのにどこか遠慮を感じられた。『おまえ』ではなく、『あなた』だったり、『殺す』ではなく、『ウバう』だったり」
玲那はそこまで考えていなくて、というより、すでにあの出来事を忘れていたため、今、言われて驚いていた。
「だけど、あそこで逃がさないで捕まえていたら、多香枝さんは命を奪われなかったかもしれない。……そう思うと、あのときの行動を後悔している」
そうして、多香枝が殺され、依里佳が殺され──。
景臣は、ふっと鼻で笑った。
「金のために、自分の好きな相手と家族を殺すなんて、狂ってるな」
「……そうですね」
「多香枝さんは、それを阻止しようとしたんだろう。やったことは許されないけどな」
玲那の実家もお金がなくて困っているけれど、だれかを殺してまで手に入れようなんて、思いもしなかった。
玲那はなにもせず、ただ破滅が訪れるのを待っていた。
それに比べれば、憂佳はやってはいけないことをたくさんしたけれど、自分で状況を変えようとあがいたところはすごいのかもしれない。だけどその行動力も、向かってはいけない方向に使われてしまったため、巻き込まれた人たちが不幸になってしまった。
「また近日中に、警察から事情聴取が行われるだろう」
「はい」
「今回は俺も呼ばれるだろうが、これでもう、犯人は捕まったから、危険はない」
「え……」
「みんな俺が『安全宣言』をしないと思っていたみたいだが、そういうわけにはいかないだろう?」
「…………」
その意味するところを玲那は考えて、ソファから立ち上がり、景臣のそばへと行った。
「だけど俺は、十朱からようやく解放されて、清々しい気分だ。それに、前にも言ったが、俺からは契約の解除はできないし、できたとしても、する気はない」
景臣は近寄ってきた玲那を見上げ、笑った。
「ここから先のことは、玲那、君が自分で考えて、君の考えで動いてほしい。俺は自分の行く末を、玲那に託す」
景臣はなにかから解放されたのか、思っていたよりも穏やかで、爽やかな笑顔をしていた。
「十朱の事務所で玲那に液体を掛けてきたのも、多香枝さんだ」
「えっ!」
「実は追いかけて、多香枝さんだと分かったんだが、あえて逃がした」
「なんでですか!」
「多香枝さんの真意が分からなかったからだ。あの脅迫状の文言は凶暴的なのにどこか遠慮を感じられた。『おまえ』ではなく、『あなた』だったり、『殺す』ではなく、『ウバう』だったり」
玲那はそこまで考えていなくて、というより、すでにあの出来事を忘れていたため、今、言われて驚いていた。
「だけど、あそこで逃がさないで捕まえていたら、多香枝さんは命を奪われなかったかもしれない。……そう思うと、あのときの行動を後悔している」
そうして、多香枝が殺され、依里佳が殺され──。
景臣は、ふっと鼻で笑った。
「金のために、自分の好きな相手と家族を殺すなんて、狂ってるな」
「……そうですね」
「多香枝さんは、それを阻止しようとしたんだろう。やったことは許されないけどな」
玲那の実家もお金がなくて困っているけれど、だれかを殺してまで手に入れようなんて、思いもしなかった。
玲那はなにもせず、ただ破滅が訪れるのを待っていた。
それに比べれば、憂佳はやってはいけないことをたくさんしたけれど、自分で状況を変えようとあがいたところはすごいのかもしれない。だけどその行動力も、向かってはいけない方向に使われてしまったため、巻き込まれた人たちが不幸になってしまった。
「また近日中に、警察から事情聴取が行われるだろう」
「はい」
「今回は俺も呼ばれるだろうが、これでもう、犯人は捕まったから、危険はない」
「え……」
「みんな俺が『安全宣言』をしないと思っていたみたいだが、そういうわけにはいかないだろう?」
「…………」
その意味するところを玲那は考えて、ソファから立ち上がり、景臣のそばへと行った。
「だけど俺は、十朱からようやく解放されて、清々しい気分だ。それに、前にも言ったが、俺からは契約の解除はできないし、できたとしても、する気はない」
景臣は近寄ってきた玲那を見上げ、笑った。
「ここから先のことは、玲那、君が自分で考えて、君の考えで動いてほしい。俺は自分の行く末を、玲那に託す」
景臣はなにかから解放されたのか、思っていたよりも穏やかで、爽やかな笑顔をしていた。

