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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第5章 【五話】ふたりの距離
■ □ □
今までの仏頂面が嘘のように、景臣は不自然なくらいの笑みを浮かべていた。
「玲那さん」
「……は、い」
「あなたも、不憫ですね」
景臣は意味深な言葉を口にした後、今までの笑顔が嘘だったかのようにいつもの無表情へと戻った。
玲那は思わず見間違えてしまったのかと自分の目を疑って何度も瞬きを繰り返したが、あれは見間違いではない。その証拠と言うにはとても弱いけれど、何度も瞬きをした後でも玲那の瞳の奥に残像が残っていた。不穏な笑みではあったけれど、景臣はきちんと笑っていた。
滅多に見ることの出来ない景臣の笑みに玲那はふわふわした気分でいたけれど、淡々と告げられた言葉に現実に戻ってきた。
「ここの最上階にある事務所に行きます」
「……事務所」
「そこに懇意にしている弁護士がいまして、相談に乗ってくださるとのことです」
そう言われ、玲那は両親が話していたことを思い出した。
道弘との結婚が決まる前のこと。玲那の父・正文(まさふみ)は不景気のせいでの事業の失敗が響き、身動きのとれない状況であったようだ。会社の今後のことを考えて顧問弁護士に相談をしたくても、相談料が高くて払えそうにないから変えるかどうかということを小耳に挟んだ。
結局、道弘が目先のお金を工面してくれたおかげでとりあえずそこは乗り切れたらしいのだが……。
相談料が高くて払えないと嘆いたということは、相当高いのだろう。となると、それは個人ではとてもではないけれど払えない金額なのではないだろうか。
「あのっ」
身の振り方と言われたが、そんな重大なこと、玲那一人で決められることではない。それに、弁護士を交えてということは、それ相応のお金がかかるということで……。
「わたし……その……」
今までの仏頂面が嘘のように、景臣は不自然なくらいの笑みを浮かべていた。
「玲那さん」
「……は、い」
「あなたも、不憫ですね」
景臣は意味深な言葉を口にした後、今までの笑顔が嘘だったかのようにいつもの無表情へと戻った。
玲那は思わず見間違えてしまったのかと自分の目を疑って何度も瞬きを繰り返したが、あれは見間違いではない。その証拠と言うにはとても弱いけれど、何度も瞬きをした後でも玲那の瞳の奥に残像が残っていた。不穏な笑みではあったけれど、景臣はきちんと笑っていた。
滅多に見ることの出来ない景臣の笑みに玲那はふわふわした気分でいたけれど、淡々と告げられた言葉に現実に戻ってきた。
「ここの最上階にある事務所に行きます」
「……事務所」
「そこに懇意にしている弁護士がいまして、相談に乗ってくださるとのことです」
そう言われ、玲那は両親が話していたことを思い出した。
道弘との結婚が決まる前のこと。玲那の父・正文(まさふみ)は不景気のせいでの事業の失敗が響き、身動きのとれない状況であったようだ。会社の今後のことを考えて顧問弁護士に相談をしたくても、相談料が高くて払えそうにないから変えるかどうかということを小耳に挟んだ。
結局、道弘が目先のお金を工面してくれたおかげでとりあえずそこは乗り切れたらしいのだが……。
相談料が高くて払えないと嘆いたということは、相当高いのだろう。となると、それは個人ではとてもではないけれど払えない金額なのではないだろうか。
「あのっ」
身の振り方と言われたが、そんな重大なこと、玲那一人で決められることではない。それに、弁護士を交えてということは、それ相応のお金がかかるということで……。
「わたし……その……」