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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第11章 【十一話】プロポーズでは駄目なのでしょうかと聞けたら良かった
     ■ □ □

 玲那が睨んだところで、景臣の表情は変わらない。
 それは分かっていたけれど、景臣の黒に近い焦げ茶の瞳は玲那を探るような光を宿していた。

「警察が出来るのは、巡回の回数を増やして警戒態勢を敷くことくらいですよ」
「それでも充分じゃない!」
「あなたは、先ほどのような目に遭っても、そんなことが言えるのですね」
「だって、おかしいです! わたしから依頼をしたのならともかく、どうして景臣さんからそんな契約を持ちかけてくるのですか」
「言ったではないですか。私は十朱と名乗りたくない、一刻も早く捨て去りたいのです」
「それならっ!」

 玲那はそこまで言った後、慌てて口を閉じた。
 自分がなにを言おうとしたのかということを考えると、顔が熱い。

 ──普通にプロポーズすればいいじゃない!

 これではまるで、玲那から結婚をねだっているみたいではないか。恥ずかしすぎて、全身が熱い。

 玲那は景臣と知り合うまで、恋しいという感情を知らなかった。それは一生知ることのないものだと、思いこんでいた。
 だから初めて景臣を見たとき、心臓が止まった。
 親が決めた人と結婚しなければならないということは、幼い頃より分かっていた。それでも、玲那とて、年頃の女性だ。夢を見なかったわけではない。夢を見ただけ現実が辛くなるのは知っていたけれど、それでも、理想の相手を考えることは、ままならない現実から逃避が出来て、楽しかった。
 だからその理想はあくまでも理想だと、割り切っていた。
 ところがである。
 玲那の結婚が決まって、改めての顔合わせの席で理想を体現した人と会うなんて、思いもしない出来事が起こってしまった。
 だから心の奥底で道弘の死を願っていて──……。
 いや、違う。玲那は道弘を殺してない。死んでほしいなんてことも、思ってない。
 だから首を振ったのだが、景臣は口を閉ざしてしまった玲那をどう思ったのか、口を開いた。

「それなら?」
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