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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第14章 【十四話】器を満たすもの
そう言われてしまえば、玲那は反論ができない。
今まで、両親が敷いたレールの上を、しずしずと、なにも考えないようにして通るのが当たり前だと思っていた。それが正しい淑女の姿だと、両親にそう言って育てられたからだ。
そして将来、両親が決めた人と結婚して、筒宮の血を残すのが玲那の役割であり、使命であり、それが生きる意味だとも言われた。
玲那の身体はいわば、筒宮の血を入れる器でしかない。
筒宮の名を守り、子を産み、血を後の世に送る。
筒宮の家に生まれた子女の正しい生き方だと言われ続ければ、両親の言うことであるし、根が純粋なこともあって、そのことを疑問にも思わず、言われたままに育ってきた。
いい学校に行き、いい成績を修めるのは、より良い血を筒宮の血脈に迎え入れるために必須だと言われれば、玲那はそれを遵守するのが役割であると学業にも励んだ。
学業のみではなく、ピアノにお茶にお花に……と、ありとあらゆるものを学んだ。
そのことになんの意味があるのか、なんて考えることはなかった。
玲那は筒宮の血を伝えるための器である。すでに玲那の器には筒宮の血が満たされていて、空っぽではないはずだ。
「わたしは、空っぽでは──」
ない、と主張をしようとしたが、景臣に視線だけで止められた。
思わず玲那は口を噤んだ。
「それならば、どうしてご自身で判断をしないのですか」
「私の行く末を決めるのは、両親だからです」
「ほら、そこ。思考が停止していますよね、玲那さん。あなたはいつ、自分で考え、行動しましたか?」
「さっきも……」
「さっきとは、食事の件ですか?」
「そうです」
「へぇ? 男に無理矢理口づけられた挙げ句、口移しで食べさせられ、それを食べるのがご自分で考えたことだと!」
景臣はそう言った後、玲那を馬鹿にしたように声を上げて笑った。
「そんなに俺とのキスがよかったんだ? 俺の唾液まみれのプチトマトを大切そうに口の中で転がしていたよな。そんなに美味しかったのか」
「ちがっ」
「いいですよ。あなたが嫌っていうほど、俺の唾液を飲ませてあげる」
今まで、両親が敷いたレールの上を、しずしずと、なにも考えないようにして通るのが当たり前だと思っていた。それが正しい淑女の姿だと、両親にそう言って育てられたからだ。
そして将来、両親が決めた人と結婚して、筒宮の血を残すのが玲那の役割であり、使命であり、それが生きる意味だとも言われた。
玲那の身体はいわば、筒宮の血を入れる器でしかない。
筒宮の名を守り、子を産み、血を後の世に送る。
筒宮の家に生まれた子女の正しい生き方だと言われ続ければ、両親の言うことであるし、根が純粋なこともあって、そのことを疑問にも思わず、言われたままに育ってきた。
いい学校に行き、いい成績を修めるのは、より良い血を筒宮の血脈に迎え入れるために必須だと言われれば、玲那はそれを遵守するのが役割であると学業にも励んだ。
学業のみではなく、ピアノにお茶にお花に……と、ありとあらゆるものを学んだ。
そのことになんの意味があるのか、なんて考えることはなかった。
玲那は筒宮の血を伝えるための器である。すでに玲那の器には筒宮の血が満たされていて、空っぽではないはずだ。
「わたしは、空っぽでは──」
ない、と主張をしようとしたが、景臣に視線だけで止められた。
思わず玲那は口を噤んだ。
「それならば、どうしてご自身で判断をしないのですか」
「私の行く末を決めるのは、両親だからです」
「ほら、そこ。思考が停止していますよね、玲那さん。あなたはいつ、自分で考え、行動しましたか?」
「さっきも……」
「さっきとは、食事の件ですか?」
「そうです」
「へぇ? 男に無理矢理口づけられた挙げ句、口移しで食べさせられ、それを食べるのがご自分で考えたことだと!」
景臣はそう言った後、玲那を馬鹿にしたように声を上げて笑った。
「そんなに俺とのキスがよかったんだ? 俺の唾液まみれのプチトマトを大切そうに口の中で転がしていたよな。そんなに美味しかったのか」
「ちがっ」
「いいですよ。あなたが嫌っていうほど、俺の唾液を飲ませてあげる」