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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第14章 【十四話】器を満たすもの
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 それにしても、今日はなんだか大変長いような気がする。
 いや、気がする、ではなくて、実際にめまぐるしいくらい状況が変わった。長く感じないわけがない。
 玲那は再度、景臣が運転する車に乗り込み、車窓を眺めながら今日の出来事を思い出していた。

 警察での事情聴取に始まり、実家に帰ると道弘が亡くなったことよりも、今後、お金をどうしようかと言ってくる両親に、いきなりの景臣からの提案、そしてそれに伴っての契約。
 景臣は十朱の名を捨てたいから玲那を金で買ったと言っているが、それは本当なのだろうか。
 夜が訪れて暗くなってきたために鏡と化した窓ガラスに景臣が映っていた。車内は明かりをつけていないが、車外のテールランプが景臣の横顔を照らしていた。
 どういう意図があってタキシードを着ているのか分からないけれど、背が高く肩幅のある景臣には大変似合っているタキシード。普通ならば浮いてしまいそうなのに、着こなしているのはすごいと思う。
 そんなことを考えていると、景臣の視線がちらりとこちらを向いた。ガラス越しであるけれど、視線が合う。
 景臣はそのことに気がついたのか、魅惑的な笑みを浮かべ、口を開いた。

「玲那。あなたは神を信じますか」
「……え?」

 思いもしない質問に、玲那は瞬いたあと、思わず振り返った。
 すでに景臣の視線は玲那には向いていなかったが、続けた。

「社長の結婚式ですが」
「……はい」
「どうして人前式になったのか、知っていますか」
「……いえ。全部任せっきりでしたから」
「そうですよね。あなたにはご自分の考えも意志もなにもない、空っぽな人だ」
「…………」
「あなたの中身には、すっかすかの、根拠のないプライドしかない」
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