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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 どれほどの疑いをもってしても、彩里の身体のどこにも獣らしき箇所はない。
 当たり前ではないか。一体、俺は何を考えてるんだ。彩里が狐だなんて話、あり得るはずがない。
 たとえしなやかでこの上なく淫らな身体をしたこの女が爪を研ぐ山猫のようであったとしても、本物の狐であるはずがない。
 そう、俺はこのしたたかで可愛い山猫の獲物なのだ。妻にわずかな疑念を抱きながらも、この魅惑的な女に夢中にならずにはいられない。
 彩里が山猫だというのなら、今宵、俺は歓んで山猫に食べられるとしよう。
 俊秀がなおも傷痕をなぞっていると、彩里が甘えるように身体を寄りかからせてくる。見上げる両眼に媚が含まれている。
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