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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 俊秀は烈しく首を振り、両手で顔を覆った。
 何ということだろう。彩里は、やはり狐だったのだ!!
 薄々、そうではないかという予感はあった。しかし、狐が人間に化けて現れるなどという極めて非現実的な話が起こり得るはずがない―と高を括っていたのだ。
 いや、心のどこで、俺はもう知っていたのかもしれない。先の満月の夜、庭であの狐を見た時、もしかしたら、かなりの確率で彩里があの狐―彼が山で傷の手当てをしてやった狐ではないかと疑っていた。
 ただ、彼自身がその事実を認めたくないから、気づかないふりをしていただけなのだ。
 俊秀だって、この国に生まれ育った人間だから、九(ク)尾(ミ)狐(ホ)の話なら知っている。朝鮮の民は子どもの頃から、祖母や母親から寝物語にその話を聞かせられるのだから。
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