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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 彩里の身体が―いや、彼女の姿そのものが揺らぎ始めたのだ。まるで目くらましを見ているような気分だったが、彼の眼に映る彩里は見る間に小さくなり、見えなくなってしまった。
―彩里?
 悲鳴を上げて駆け寄ろうとした彼は更に我が眼を疑った。
 彩里がいたはずの場所に、ちょこんと小さな狐が座っていた。
 間違いない。この前の満月の夜、裏庭で月明かりを浴びていたあの若い狐だ。艶やかな毛といい、黒い円らな瞳といい、あの狐と全く同じ容貌をしている。
 俊秀は愕然としてその場に立ち尽くした。
 やはりという想いとまさか何かの間違いだという信じたくない気持ちが渦巻いていた。
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