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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 が、この金ソンイにはただ一つ、しかも決定的な難点があった。それは、無類の女好きということだ。ソンイには奥方の暮らす本邸にも数人の妾がいるが、更に漢陽のあちこちの別邸にも複数の側妾を置いているという。
 まあ、その外見からして、流石に武官上がりと思わせる屈強な体軀といかめしい風貌におよそ似合わない細い眼は、いかにも好色そうな光が瞬いている。
 俊秀は、できるならば、彩里を金ソンイの屋敷に行かせたくはなかった。当然のことだ。ソンイが王宮の帰りに輿で町を通る際は、人妻でも嫁入り前の娘でも、美しい女なら必ず家の中に隠せ―と言われるほどで、とにかく美しい女には眼がない男である。
 少女のあどけなさと妖艶な女の顔を持つ美しい彩里。彼の妻をひとめ見て、ソンイが食指を動かさないはずはない。
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