この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
しかし、彩里がそれを認めるはずもない。彼の大切な妻は、愛らしい外見に似合わず、なかなか頑固だ。ソンイの屋敷には自分が代わりに届けにゆくと言い張って譲らなかった。
―もし、お前が兵(ピヨン)判(パン)大(テー)監(ガン)の眼に止まったりしたら、どうするんだ?
俊秀が顔色を変えて止めても、彩里は微笑んだ。
―お屋敷の使用人に薬を渡したら、すぐに帰ってくるわ。それなら、兵曹判書さまが私を見ることもないでしょう。
そう容易く事が運ぶとは思えない、というのが俊秀の本音である。美しい女、意に適った女を手に入れるためには、どんな労でも惜しまないと評判の金ソンイだ。使用人から美貌の女房が代わりに薬を届けにきたと聞けば、飛んででも彩里をひとめ見にやってくるだろう。
―もし、お前が兵(ピヨン)判(パン)大(テー)監(ガン)の眼に止まったりしたら、どうするんだ?
俊秀が顔色を変えて止めても、彩里は微笑んだ。
―お屋敷の使用人に薬を渡したら、すぐに帰ってくるわ。それなら、兵曹判書さまが私を見ることもないでしょう。
そう容易く事が運ぶとは思えない、というのが俊秀の本音である。美しい女、意に適った女を手に入れるためには、どんな労でも惜しまないと評判の金ソンイだ。使用人から美貌の女房が代わりに薬を届けにきたと聞けば、飛んででも彩里をひとめ見にやってくるだろう。