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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
「彩里」
呼び止めようと差しのべた手は空しく宙を泳ぐ。
俊秀は彩里を追って、まろぶように家の外に転がり出た。彼の最愛の妻は待ち受けている輿に向かって歩いてゆくところだった。
俊秀を認め、執事が上機嫌で近寄ってくる。
「どうやら話はついたようだな。俊秀、女房の方がよほど物判りが速いではないか。こんなことなら、最初から女房の方に話をするんだった」
訳知り顔で滔々と述べ立てる執事を睨めつけ、俊秀は唾棄するように言った。
「お喋りな口を閉じた方が身のためだぞ。それ以上、うだうだとつまらないことを抜かしたら、明日からは二度と喋られないように舌を引っこ抜いてやる」
呼び止めようと差しのべた手は空しく宙を泳ぐ。
俊秀は彩里を追って、まろぶように家の外に転がり出た。彼の最愛の妻は待ち受けている輿に向かって歩いてゆくところだった。
俊秀を認め、執事が上機嫌で近寄ってくる。
「どうやら話はついたようだな。俊秀、女房の方がよほど物判りが速いではないか。こんなことなら、最初から女房の方に話をするんだった」
訳知り顔で滔々と述べ立てる執事を睨めつけ、俊秀は唾棄するように言った。
「お喋りな口を閉じた方が身のためだぞ。それ以上、うだうだとつまらないことを抜かしたら、明日からは二度と喋られないように舌を引っこ抜いてやる」