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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
執事が苦虫を噛み潰したような表情で、こちらを見ている。その顔には明らかに
―余計なことをしおって。
と、書いてある。
しかし、今は執事の思惑などに頓着しているときではない。
今、彩里を行かせれば、自分はこれから先ずっと後悔することになるだろう。生涯にただ一人の女と定めた妻さえ守れない不甲斐ない男になり果ててしまう。
「あなた、私を信じて下さい。私はけして、あなたを裏切ったりはしません」
彩里は低声で囁くと、すぐに俊秀から身を離した。