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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
「それでは、参ります」
執事があからさまにホッとしたような顔で頷く。
輿の戸を控えていた家僕が開け、彩里が乗り込む。その間際、彩里が振り返った。
視線と視線が切なく絡み合い、離れる。
―俊秀、私を信じて。
彩里の眼は確かにそう語っている。
頷き返すこともできず、俊秀はただ眼を見開いたまま妻を見つめるしかなかった。
最後に彩里は哀しげに微笑み、輿の中に消えた。家僕が再び輿の戸を閉める。
輿が動き出しても、俊秀はボウと惚けたようにその場に立っていた。
ふと我に返った時、既に彩里を乗せた輿は狭い道の角を回り、完全に視界から消えていた。
執事があからさまにホッとしたような顔で頷く。
輿の戸を控えていた家僕が開け、彩里が乗り込む。その間際、彩里が振り返った。
視線と視線が切なく絡み合い、離れる。
―俊秀、私を信じて。
彩里の眼は確かにそう語っている。
頷き返すこともできず、俊秀はただ眼を見開いたまま妻を見つめるしかなかった。
最後に彩里は哀しげに微笑み、輿の中に消えた。家僕が再び輿の戸を閉める。
輿が動き出しても、俊秀はボウと惚けたようにその場に立っていた。
ふと我に返った時、既に彩里を乗せた輿は狭い道の角を回り、完全に視界から消えていた。