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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 それにしても、何故、こんなに哀しいのか。女を、貧しい民を人間ではなく、意のままにできる玩具と思い込んでいるような下衆野郎が死んだからといって、泣くことはないのに。むしろ、これで、この男に無理強いされて泣かされる不幸な女がいなくなるのだから、歓ぶべきなのではないだろうか。
 それでも、涙は溢れ、白い頬をすべり落ちた。
 ―殺すつもりはなかったのに、結局、人ひとりが死んでしまった。
 彩里が血に染まった一面の雪を魅せられたように眺めているその背後で、悲鳴が上がった。
 寝所の方で不穏な人声や気配を聞きつけた女中が様子を見にきたのだ。急に吹き始めた嵐とも見紛う突風のため、殆ど視界がきかない。
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