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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
厳寒の季節になれば、この険しい山々も彩里が暮らす森も真っ白な雪がうずたかく積もり、白一色の厳粛な世界に変わる。森の生きものたちにとっては、生き抜くのには苛酷な長くて辛い時期だ。
もうすぐ、秋が終われば、直にその冬がやってくる。今年もまた、一匹で孤独な冬を過ごさなければならないのかと思うと、心は鉛を呑み下したように重く沈んでゆく。
彩里は思わず顔をしかめた。心ない猟師が仕掛けた罠にかかってしまい、彩里の小さな前脚はひどく傷ついていた。何とか自力で罠から抜け出したものの、無理に引き抜いたせいで、右脚の傷は余計に烈しくなり、赤い血を流していた。
この罠を仕掛けた猟師を彩里は知っている。彩里をいつも執拗につけ狙い、何とか罠にかけて、毛皮を剥ごうと企んでいる情け知らずの怖ろしい男だ。
もうすぐ、秋が終われば、直にその冬がやってくる。今年もまた、一匹で孤独な冬を過ごさなければならないのかと思うと、心は鉛を呑み下したように重く沈んでゆく。
彩里は思わず顔をしかめた。心ない猟師が仕掛けた罠にかかってしまい、彩里の小さな前脚はひどく傷ついていた。何とか自力で罠から抜け出したものの、無理に引き抜いたせいで、右脚の傷は余計に烈しくなり、赤い血を流していた。
この罠を仕掛けた猟師を彩里は知っている。彩里をいつも執拗につけ狙い、何とか罠にかけて、毛皮を剥ごうと企んでいる情け知らずの怖ろしい男だ。