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第4章 宿命

「何とか言ってくれよ、彩里。俺さえ何も言わず、お前の正体を誰にも喋らなければ、それで良いんだろう？　たとえ知っているとしても、知らないふりをすれば良い。すべては丸く収まるんだから」
　二人の間に沈黙が落ち、部屋の温度が一挙に下がったような気がした。
「彩里」
　促すかのように呼びかけ、期待を込めて見つめていると、彩里は儚い笑みを浮かべた。
「たとえ、あなたがそれで良いと言ってくれても、事はそう簡単にはゆかないわ。あいつ(兵曹判書)を殺してしまった時、侍女に見られてしまったって言ったでしょう。女中に見られた時、私は今のこの姿ではなくて、狐に還っていたの。あいつの息の根を止めるのには相当な力が要ったから、あれ以上、人間の姿を保つのは難しかった。どうしようもなかったわ」