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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
「祝言を挙げて半月経った頃かな。満月の夜、眼が醒めた時、隣で寝ているはずのお前がいなかった。その時、裏庭で九尾狐に戻っているお前を見たんだ」
「知っていたのね」
 彩里は小さな溜息を一つ洩らし、改めて顔を上げ俊秀を見つめた。
「俺は構わない。たとえ、彩里が狐だろうと、そんなことはどうだって良い。俺にとっては、お前は生涯にただ一人の女なんだ。何ものであっても、彩里がただ傍にいてくれるだけで幸せなんだ」
 直截な気持ちを告げても、彩里は何も言わず、形の良い柳眉をきつく寄せている。何事か懸命に考えているといった様子である。
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