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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
もう忘れているだろう、俺の事なんて。
進路は決まったのか?
行くとこあるのかあいつ。

「茜、ちょっとそこで休憩してから映画でも見る? 上手いイタリアンレストラン知ってるから夕食はそこにしよう。田舎にはご飯食べてから帰る予定だよね」

「……うん」

俺達は、ビルの7階にあるカフェに入った。
運良く窓際の席が空き、二人してクリームソーダを注文する。

「いつ来ても賑やかな街だね」

林立するビルや、重なり合ってる無数の看板。眠らない街の昼間はまるで、段ボール箱にぎっしりと詰め込まれた本の背表紙みたいだ。

「亮ちゃんて、よく毎日こんなとこで生きてられるよね、しかも証券会社勤務なんて。お仕事大変なのがよくわかる気がする。私、大丈夫かな、心配になってきた」

「う、うん、まあ、茜なら大丈夫だって。あ、そうだ」

話題を変える為に、俺はポケットに手を突っ込んだ。

「え、なあにそれ」

紺色の平たい箱をテーブルに置いて、茜の前につつっと押し出した。

「ちょっとしたプレゼント。俺からの就職祝い」

「やだ、こんな事してくれなくても……」

「いいからいいから」

両手で箱を持ち上げて、神妙な顔をする茜。

「ねぇ、開けてもいい?」

「もちろん。気に入るといいんだけど」

「気に入るに決まってるよ。もう気に入ってるもん」

「あはは」


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