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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
なぜ台本にないことを言い出すんだ茜。

「いや、そんな事ないけど、せっかくだからこの辺で都会を味わった方が……」

「都会より空を見てたいよ。ここでは山も空も見えない。それより私、亮ちゃんちでゆっくりおしゃべりしたい」

愛宕山から見える南アルプスの山々が目に浮かんだ。愛宕山はもう、秋の紅葉へと姿を変える頃だろう。

「わ、わかった」

「ほんと?よかったー。じゃあもう行こうよ、電車で2駅ぐらいって言ってたっけ」

で、電車?電車は無理……。

「そういえば亮ちゃん、さっきどこから来たの?駅から出てこなかったよね」

「あ、うん、バスで来たから」

「なんでバスなの?」

夕食を食べてから全てを話す計画が、ものの見事に崩れてく。ちょっとでも長く茜と居たかったのに。
俺の立てる計画は、こんな事さえ上手くいかないんだな。

仕方がない。
 
「茜、俺、電車に乗るとパニック起こすんだ」

「え?」

「ドキドキして、息が出来なくなって……だから電車に乗るのが怖くて、もうずっと乗ってない、一年以上」

「亮ちゃん……。病院には行ったの?」

「通ってた。しばらく薬を飲んだりして、だいぶ良くなってた」

「じゃあ今は?」

「行ってない。俺、いろいろと疲れてて……電車を避ければなんとかなったから、もうそれでいいかなって……」



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