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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
しばらく俺を見つめていた茜は、何を思いついたのか、空箱や包装紙をバッグにしまい込んで立ち上がった。

「亮ちゃん行こう」

「ど、どこに」

いそいそと会計に向かう茜。

「待って、俺が払うよ」

「わぁい、ありがとう、ごちそうさまです」

にこにこと後ろに下がって俺を待ってる無邪気なやつ。
いったい何を考えてるんだ。

ビルから出ると、茜は俺の手を引いて駅の方に歩き出した。

「ちょ、ちょっと茜、どこ行くんだよ」

「どこだっけ、確か小田急線でいいんだよね」

「そ、そうだけど、い、一度引っ越したから駅は変わったんだけど……」

「とにかく電車に乗ってみようよ」

俺は立ち止まった。

「無理だって、茜に迷惑かけるから」

「亮ちゃん、今日は誰と一緒なの?」

なにその、毅然とした態度。

「え……、茜とだけど」

「だったら大丈夫でしょ、こうやって手をつないでおしゃべりしてるの、ちっとも怖くないよ。平日の今の時間空いてるし、絶対、絶対大丈夫。第一、迷惑なんかじゃないから」

「……」

茜は、いつの間にこんなに強くなったんだろう。俺はいつの間に、こんなに弱くなってたんだろう。

逃げてたのか。
良くなってきてたのに、途中であきらめて……。

改札までの道のりは、思い出話に花を咲かせた。

女の子の間では俺は割と人気があったらしくて、茜は気が気じゃなかったとか、新しくできたショッピングセンターや、つぶれた居酒屋の話とか。

俺の気持ちがほぐれるように、面白おかしく、田舎のニュースを提供する茜。

それは、過去にもした話だったかもしれないけど、二人で話すと心が和んだ。

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