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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
「亮ちゃん平気? 降りたほうがいいかな」

「いや、大丈夫みたい。おさまった」

ほっとする俺の顔を覗き、茜がニッと笑った。

「やっば亮ちゃんには私が必要だねぇ、この茜様が」

「なんか、ホントに楽になった。茜様、わりぃじゃんねぇ」

久しぶりに使ったありがとうの言葉。

「ぷっ、あはははは、いいさよぉ」

溺れているときに手を差し伸べられたような、孤独から抜け出せたような、温かな安心感が俺を包んだ。

少したれ目の茜がにっこりすると、俺はもっと安心する。
手を握り、肩にもたれてくる茜が愛しい。俺たちは寄り添い、流れてく景色を見送った。

なんだ、平気じゃないか。
何も怖くないじゃないか。

茜から伝わってくる温もりは、勇気を与えられているみたいだった。

「私ね、閉所恐怖症なの」

「え?」

「エレベーターとかは全然平気だよ。でもね、暗くて天井が低い場所は、さっきの亮ちゃんみたいになるの。ホント、息が出来なくなった時は怖かった。ほら、よくテレビで狭い洞窟探検とかあるでしょう?ああいうのって、見てるだけで苦しくなるの」

「そうだったんだ」

「もしもの時は助けてね、そんな場所あんまりないけどね、ふふっ」

「うん、絶対助けるよ」

ぎゅっと握った俺の手には、温かみが戻ってきていた。



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