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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
あ、あれはあの不倫妻の車じゃないか。買い物から帰るところか。いいよな、呑気で。それに比べて俺ときたら……。

「大丈夫です。もう、なんともないです。ありがとうございました」

ユウが丁寧語を使ってる。

「ほんとにごめんなさい。ほら、亮ちゃんも突っ立ってないでこっち来てよ」

な、なんで俺を巻き込むんだ。

おせっかいな所がちっとも変ってない茜。
そういえば、ベビースモーカーだった親戚のおじさんが肺がんで亡くなって、凄く悲しんでいた事があったっけ。

「ね、あの人ちょっとかっこいいでしょう?ふふっ」

わ、やめろよ茜。

固まって動けない俺の前に、ユウがささっと近寄ってくる。

ひ……、ありえない。
万事休す。

たじろぐ俺をじっと見つめるユウ。頭の中が真っ白な俺。
くるんと巻いたつけ睫毛の奥が、妖しく光った。

「…………スーツ着て、……髪は、きちんとセットされてて……。あの、申し訳ないんですけど、私おじさんには興味ないです」

「そ、そう?それは残念。……ぷ、あはは、亮ちゃんおじさんだって」

呆気にとられる俺を尻目に、ユウは茜に視線を移す。

「これ、もうやめます」

そう言って、潔くタバコを箱ごと捨ててしまった。

「わぁ、なんか嬉しい」

「私もう行かなきゃ、お姉さんさようなら」

ユウが歩き出す。

「そっちのお兄さんも、さようなら」

「あ、あぁ……」

「さよなら、がんばってね」

「はい」

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