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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
茜が何をがんばれと言ったのか、ユウが何に対して、はい、と言ったのか、さっぱりわからないまま、俺はユウの背中を見つめた。

ユウちゃん、俺に気を使ったんだろ?

俺は小声で言った。

「さよなら……」

「凄い髪の色だったね。でも、あのお化粧落としたら絶対綺麗だよあの子。すっぴんで充分なのにもったいない」

「そうかな」

「そうだよ、間違いないよ」



茜が買ってくれた飲み物とお菓子を持って、アパートに向かった。

ユウは、俺のアパートに行ったんだろうか。それともこれから行くところだったのか。
どちらにしても、茜の存在を知られて、これで本当に終わった。

ユウ、ごめん。俺ってこんなヤツだったんだ、がっかりだろ。もう変なやつに着いて行くなよ。ほんとにごめん。
情けないけど、黙っててくれてありがとう。

振り向かずに行ってしまった小さな背中に感謝した。

何で黙ってたんだ、お前……。


「ここが俺んち」

「わぁー、あこがれの一人暮らしだー」

階段を上るその声は、このアパートには似つかわしくないものだった。色の剥げかかった手すりを掴み、俺を見上げてニッとする茜。

ドアを開け、「おじゃまします」と言って狭い玄関でパンプスを脱ぐ。

「ふーん、ここが亮ちゃんのお家かぁ」

面白そうに部屋を見回すスーツでキメた茜と、その足元のせんべい布団。どうにも不釣り合いなこの組み合わせ。


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