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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
──私はいつでも応援してる、だから亮ちゃん、そんな顔やめて、自分の進みたい道を選ふべきだよ
「だったらどうして話してくれなかったの?あんなに何度も電話してたのに」
「がっかりさせたくなくて、それに、自信がなくなって、卑屈になって。ほんとに、ほんとにくだらない人間になってしまってたから俺……」
情けなさで顔を上げる事が出来なかった。
「知ってたら一緒に考えられたのに、そしたら、電車に乗る事だって、もっと早く出来るようになってたかもしれないよ。そんなに……、グスッ、そんなに一人で苦しまなくたっていいじゃない……」
「茜……」
「なによ、なにも言ってくれないなんて。グスッ、言ったでしょ、いつでも応援してるって、言ったよね、ちゃんと言ったよ私……。応援するっていうのは、力になるって事だよ」
「茜……」
「どんな亮ちゃんでもいいんだから。わ、私は、どんな亮ちゃんでも、い、いいんだからね」
「……ごめん、ごめん」
俺は正座して、両手を膝に置いて謝っていた。
「だめ、許さない、絶対許さない」
茜はそう言って俺を抱き締めた。
「ずっと抱き締めて欲しかった。だって遠いんだもん、凄く寂しかった。言えなかったの、寂しいからたまには帰って来てって、私も言えなかったの。……だから、亮ちゃんの気持ちわかる。わかるよ……」
「茜……」
柔らかな懐かしい身体を、俺は大切に抱き締めた。髪の匂いも、頬の膨らみも変わらないのに、目元の艶やかさが増していた。
目尻から流れた涙を唇で拭った。
耳に唇を押し当て、親指で唇を撫でた。
俺達は見つめ合い、そして、唇を重ねた。