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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
「あ、あるよもちろん。それに、自分の事より茜が心配だ。変な男に絡まれたら大変だからな」

「大丈夫かなぁ」

「大丈夫だと思う事が大事なんだろ?」

「そう、そうだね、そうだった。ふふっ」


帰宅ラッシュ時を過ぎた電車内で、俺たちは肩を並べて座った。
澄んだ空気に洗われた街の灯が、窓の向こうを彩っている

「寒くない?」

「ぜんぜん平気。ふふっ、このマフラー、亮ちゃんの匂いがするよ」

押入れから引っ張り出した白いマフラーを、紙袋から出して匂いを嗅ぐ茜。

「向こうは冷えるから、それをちゃんと巻いて迎えを待つんだぞ」

「うん」

茜の両親もきっと心配してるだろうな、かわいい一人娘を大都会に出すんだから。
その為にも俺はもっとちゃんとしないとな。次はちゃんと胸を張って挨拶したい。

「……亮ちゃん」

「ん、なに?」

「私の叔父さんね、ほら、税理士の」

「あぁ」

「世話好きで陽気な人なんだけどね、商売柄いろんな取引先と親しくしてて、その……どうかな、亮ちゃんさえよかったら、叔父さんに……」

遠慮がちにそう切り出した茜は、もごもごと口ごもった。

「もしかして、俺の就職?」

「うん……。亮ちゃん成績優秀だし、がんばって資格も取ったし、私が言うのもなんだけど、もったいない人材だよきっと」

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