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歪んだ鏡が割れる時
第4章 第四章
俺は外務員一種を取得した後、ファイナンシャルプランナー2級を目指していた。
そう、夢を描いていた事もあったんだ……。
でももう、カッコつけてる場合じゃない。
「お願いしてみようかな。俺、自分でも探すよ。金融関係以外でもなんでも、とにかく足もとを固めたいんだ」
また以前のように、肩で風を切って歩く日が来るだろうか。
もう風を切らなくてもいい、今度は大切な事を見逃さないように生きていきたい。
吊革につかまって本を読んでいる女性と目が合った。茜の方がずっと可愛いげがあるなと、優越感に浸ったりできる俺がいる。
「また連絡するね」
「俺も電話する」
21時発、あずさ35号の発車を知らせるメロディが軽やかに流れ出した。開いた扉の向こうとこっちに立つ俺たちの横を、数人の客がすり抜けていく。
「じゃあ、亮ちゃんまたね」
「着いたらメールして」
「うん。これ、ホントにありがとう、大切な日の記念になった」
ブレスレットを触って真顔になる茜。そして俺の手を握り「今日、凄く素敵だった」と言って頬を染めた。
呆気なくドアが閉まり、窓越しに見つめ合った。ガラスに触れた手に手を重ね、ふと動いたお互いの唇に、愛してるの言葉を読み取った。
微笑みと感慨を残して電車が走り去る。見えなくなるまで見送った俺は、無人になったホームに佇み、物思いにふけった。
自分が寂しいヤツだと思っていたわけではなかった。でもこうして胸に広がっていく温かさを実感すると、やっぱり俺は孤独だったんだ。
しかも、好き好んでそうしていた。
ほんとに馬鹿だった。
もう素直でいよう。
茜を大切にしよう。
俺の、大切な人。
そう、夢を描いていた事もあったんだ……。
でももう、カッコつけてる場合じゃない。
「お願いしてみようかな。俺、自分でも探すよ。金融関係以外でもなんでも、とにかく足もとを固めたいんだ」
また以前のように、肩で風を切って歩く日が来るだろうか。
もう風を切らなくてもいい、今度は大切な事を見逃さないように生きていきたい。
吊革につかまって本を読んでいる女性と目が合った。茜の方がずっと可愛いげがあるなと、優越感に浸ったりできる俺がいる。
「また連絡するね」
「俺も電話する」
21時発、あずさ35号の発車を知らせるメロディが軽やかに流れ出した。開いた扉の向こうとこっちに立つ俺たちの横を、数人の客がすり抜けていく。
「じゃあ、亮ちゃんまたね」
「着いたらメールして」
「うん。これ、ホントにありがとう、大切な日の記念になった」
ブレスレットを触って真顔になる茜。そして俺の手を握り「今日、凄く素敵だった」と言って頬を染めた。
呆気なくドアが閉まり、窓越しに見つめ合った。ガラスに触れた手に手を重ね、ふと動いたお互いの唇に、愛してるの言葉を読み取った。
微笑みと感慨を残して電車が走り去る。見えなくなるまで見送った俺は、無人になったホームに佇み、物思いにふけった。
自分が寂しいヤツだと思っていたわけではなかった。でもこうして胸に広がっていく温かさを実感すると、やっぱり俺は孤独だったんだ。
しかも、好き好んでそうしていた。
ほんとに馬鹿だった。
もう素直でいよう。
茜を大切にしよう。
俺の、大切な人。