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歪んだ鏡が割れる時
第1章 第一章
「あなたの事だから間違いないとは思うけど、大切なお客様に、失礼のないようお願いします」
昨日白石から言われた言葉は、釘を刺されたというより、不安定な私を支えていた。
「ずいぶん無口だね」
フォークを皿に置き、ナプキンで口を押さえた松岡は、次にコーヒーを口に運んだ。
「緊張してるんです。失礼のないように」
ゆっくりとカップを戻す彼は、私から視線を外そうとはしない。
「その方がいい。女性は背筋を伸ばしている姿が一番美しいからね。今日の君がいつにも増して美しいのは、その緊張のせいかな?」
私は今日、スカート部分にタックの入ったワインレッドのワンピースを選び、ルビーのピアスをしていた。太股丈の薄いストッキングに黒いハイヒール。まとめた髪はいつもと同じ位置で留め、口紅の色も変えなかった。
「お客様とお食事なんて、初めてなんです」
彼の視線が苦しくなり、ミルクティーで気を紛らわせる。
「ふふ、店長さんに何か言われて来たんだね。心配ない、客と思ってくれなくて結構」
「そういうわけには」
「それより、私の我儘をきいてくれた礼をしなきゃいけないな」
「いえ、お礼なんてとんでもない」
ナプキンをテーブルに置き、松岡が立ち上がった。そして、「ちょっと横向きに座って」と、私の肩に触れた。
昨日白石から言われた言葉は、釘を刺されたというより、不安定な私を支えていた。
「ずいぶん無口だね」
フォークを皿に置き、ナプキンで口を押さえた松岡は、次にコーヒーを口に運んだ。
「緊張してるんです。失礼のないように」
ゆっくりとカップを戻す彼は、私から視線を外そうとはしない。
「その方がいい。女性は背筋を伸ばしている姿が一番美しいからね。今日の君がいつにも増して美しいのは、その緊張のせいかな?」
私は今日、スカート部分にタックの入ったワインレッドのワンピースを選び、ルビーのピアスをしていた。太股丈の薄いストッキングに黒いハイヒール。まとめた髪はいつもと同じ位置で留め、口紅の色も変えなかった。
「お客様とお食事なんて、初めてなんです」
彼の視線が苦しくなり、ミルクティーで気を紛らわせる。
「ふふ、店長さんに何か言われて来たんだね。心配ない、客と思ってくれなくて結構」
「そういうわけには」
「それより、私の我儘をきいてくれた礼をしなきゃいけないな」
「いえ、お礼なんてとんでもない」
ナプキンをテーブルに置き、松岡が立ち上がった。そして、「ちょっと横向きに座って」と、私の肩に触れた。