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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
ようやく許された私は、ベッドに背中をつけ、足首を掴んでMの字を作る。

「嬉しいね、すっかり私だけの女になった。透子、そんな恰好で何を待ってる、どうしてほしいんだ」

憎らしい表情で羞恥心を煽る彼。

「は、早くふさいで……お願いします」

「どこを」

「こ、こ……ここです……ここを……」

自ら秘肉を開く。
恥辱に悶える自分の声に、気持ちが昂る。

「ひ、浩之さん……、早くここ……ここに……」

「うむ、ご褒美だ」

「あっ……、んんあぁぁっ、あっ、あぁっ、きて、きて、あぁいい、いいっ……ん、ああぁぁっ……」

繋がって、交わって、果てる事のない欲望を貪り続ける。
烈情に突き動かされ、このひとときだけに、本当の自分を捧げる。

満たされるのは、ほんの一瞬に過ぎないと、わかっていながら……。





半年近くなる私達の関係は、逢瀬を重ねる毎に深まった。
彼の手ほどきで、より強くなる性の歓びは、彼を味わえぬまま去って行った女への憐れみを感じさせ、私は、優越感と、言い知れぬ満足感を手に入れた。

繰り返す愛欲の日々は、後ろめたさをどこかに追いやり、ここにこそ愛があるのだと、自分を正当化した。

彼の愛をひたすら受け入れ、自分を満たす。
享楽にふける。
それのどこがいけないのだろう。
日常に垣間見える僅かな不審など、取るに足らないものだ。

誰も傷付けてはいない。誰も傷付かない。
私自身も──。

ひそやかな大人の関係は続く。
そう、私達は上手くやっていける。
何一つ壊さないよう、安定した均衡を保って……。








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