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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「あ、そろそろ行こう、落ち着いてきた」

「はい」


会場に入ると、すぐ傍のテーブルにウェルカムドリンクが並んでいた。

静かに流れるBGMと明るい照明、黒いベストを着た数人のボーイ。
広々としたホールの正面には、グランドピアノと、一段高くなったステージがスポットライトで照らされている。

真ん中に設置された長いテーブルには、所狭しと料理が並べられ、それを囲むように、花が置かれた丸いテーブルが、余裕をもって点在している。壁際には椅子が置かれ、休憩出来るようになっていた。

「同窓会で行ったパーティとはわけが違うわ」

「そりゃそうだよ」

シャンパンを受け取った私達は、目立たないよう後ろの方を目指した。高級ブランドの服に身を包んだ夫婦や、和服姿の婦人達。淡く漂う香水の隙間をぬって、会釈を繰り返した。

「まぁ……」

「ねぇ、見て」

ひそひそと囁き合う声がする。
その声に振り向いた人々の視線がすべてこちらを向いた。

驚いた素振りの夫婦や、普通に会釈を返す人々。やっぱり場違いだったと後悔しつつ、私は夫の後ろをついて歩いた。

後方に定位置を決めた時、「皆様、お忙しい中、ようこそお集まりくださいました」と開会のスピーチが流れ、皆が一斉にステージの方を向いた。

「やっぱり……」

「え?」

「みんなが透子を見てた」

夫が耳打ちをする。

「……きっと場違いなのよ、やっぱり来るんじゃなかった」

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