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歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「何言ってるんだよ透子、見てごらん。誰よりも目立って綺麗じゃないか」
「やめてよ、ほら、聞こえちゃう」
振り向いた中年の女性に、2人して頭を下げた。
私達よりもっと後ろに、明らかに新人と見られる男女が参加していた。ドリンクも手にしていない所を見ると、パーティーへの参加自体が初めてなのかもしれない。
「よかった、他にも慣れない人達がいるみたい」
「うん、途中で逃げ出すかもな」
「私もそうしたいな」
「だめだめ」
短い挨拶が終わり、会場の空気が緩んだ。食器の触れ合う音が聴こえてきて、談笑の波がBGMを亡き者にしていった。
先ほどの千葉部長の所へ改めて伺い、夫は上司と、私はその妻の春菜と会話が弾んだ。
「3年前この会社に代わってから、急に帰りが遅くなったのよ。でもそれなりに評価して頂いて、主人も私も喜んでるの」
「そうだったんですか。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。水沢さんは出世頭だって、うちでも良く話題になってるのよ。なかなかやるじゃない」
気取りのない彼女の人柄にほっとした。三十代半ばだろうか。
「ありがとうございます」
「うちと違って美男美女のご夫婦ね、うふっ、注目されてたわ」
「いえそんな」
手にした赤ワインを一口飲んで、彼女は先を続けた。
「やめてよ、ほら、聞こえちゃう」
振り向いた中年の女性に、2人して頭を下げた。
私達よりもっと後ろに、明らかに新人と見られる男女が参加していた。ドリンクも手にしていない所を見ると、パーティーへの参加自体が初めてなのかもしれない。
「よかった、他にも慣れない人達がいるみたい」
「うん、途中で逃げ出すかもな」
「私もそうしたいな」
「だめだめ」
短い挨拶が終わり、会場の空気が緩んだ。食器の触れ合う音が聴こえてきて、談笑の波がBGMを亡き者にしていった。
先ほどの千葉部長の所へ改めて伺い、夫は上司と、私はその妻の春菜と会話が弾んだ。
「3年前この会社に代わってから、急に帰りが遅くなったのよ。でもそれなりに評価して頂いて、主人も私も喜んでるの」
「そうだったんですか。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。水沢さんは出世頭だって、うちでも良く話題になってるのよ。なかなかやるじゃない」
気取りのない彼女の人柄にほっとした。三十代半ばだろうか。
「ありがとうございます」
「うちと違って美男美女のご夫婦ね、うふっ、注目されてたわ」
「いえそんな」
手にした赤ワインを一口飲んで、彼女は先を続けた。