この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「どう?飲める?」
「すみません。ありがとうございます」
グラスを受け取り、少し口に含んだ水を、ゆっくりと喉に落とした。
「お陰様でだいぶ落ち着きました。慣れない場所に来てしまって緊張したみたいで」
「あー、わかるわかる。でもよかったわ落ち着いて」
「ご迷惑をおかけしました」
「ん、あら、水沢さん、副社長へのご挨拶はもうお済みですか?」
雅人が人ごみから離れ、後ずさりして近づいてきた。
「あ、いや……」
「どうかしましたか?」
「はは、圧倒されて」
雅人にしては珍しい事だ。
「わかるわー、ちょっと顔が怖いものね、ふふっ。でもダンディで有名よ。あの声を聞いたらもうメロメロ、あはは。じゃあ水沢さん、私と一緒にごあいさつに行きましょうよ。奥様はもう少しここで、ね?旦那様をお借りします」
「は、はい。私は後で」
胸をなで下ろした。
彼女は私の体調を簡単に説明すると「さあ早く、そろそろ社長や専務達もお出ましよ」と彼の腕を掴んだ。
「あら、震えてる?」
「いえ、あはは、まさか」
夫と並んで対面する事は避けられた。
ざわつきの中、夫の声がマイクに拾われて耳に入ってくる。
何も見たくない、聞きたくない。
私は俯き、水のグラスを両手で握った。
「お、お久しぶりです松岡副社長。ご昇進、おめでとうございます。水沢です」
「すみません。ありがとうございます」
グラスを受け取り、少し口に含んだ水を、ゆっくりと喉に落とした。
「お陰様でだいぶ落ち着きました。慣れない場所に来てしまって緊張したみたいで」
「あー、わかるわかる。でもよかったわ落ち着いて」
「ご迷惑をおかけしました」
「ん、あら、水沢さん、副社長へのご挨拶はもうお済みですか?」
雅人が人ごみから離れ、後ずさりして近づいてきた。
「あ、いや……」
「どうかしましたか?」
「はは、圧倒されて」
雅人にしては珍しい事だ。
「わかるわー、ちょっと顔が怖いものね、ふふっ。でもダンディで有名よ。あの声を聞いたらもうメロメロ、あはは。じゃあ水沢さん、私と一緒にごあいさつに行きましょうよ。奥様はもう少しここで、ね?旦那様をお借りします」
「は、はい。私は後で」
胸をなで下ろした。
彼女は私の体調を簡単に説明すると「さあ早く、そろそろ社長や専務達もお出ましよ」と彼の腕を掴んだ。
「あら、震えてる?」
「いえ、あはは、まさか」
夫と並んで対面する事は避けられた。
ざわつきの中、夫の声がマイクに拾われて耳に入ってくる。
何も見たくない、聞きたくない。
私は俯き、水のグラスを両手で握った。
「お、お久しぶりです松岡副社長。ご昇進、おめでとうございます。水沢です」