この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
歪んだ鏡が割れる時
第5章 第五章
「うむ、ありがとう。君も努力が報われたね」

「 ……は、ありがとうございます。こ、これからも社の発展の為に、なお一層の努力を惜しみません」

落ち着いた松岡の声に比べ、雅人の声は緊張のせいで上擦っていた。

「君にも紹介しよう、初めてかな?妻の綾香だ」

「……はじめまして、奥様」

「どうも、よろしくお願いします」

分かっていた筈の妻の存在に胸が痛んだ。張りのある、少し高音の落ち着いた声。
想像もしなかった、けれど当たり前の事が起きている。
私は顔を上げ、ステージに目を向けた。

ふんわりした茶色い髪がスポットライトを浴びて輝き、にこやかに笑って雅人と握手を交わす女性。四十には満たない、若々しくて、育ちが良く、けれどプライドの高そうな人。
そして、それが彼女の魅力になっていた。

私の入り込める場所はなかった。

二人を見つめる松岡は嬉しげに微笑み、何度か頷いた。ふと、奥にいる私に目を向けた。
見つめ合い、そしてすぐ、少し哀しげに眼を伏せた。

「っ……」

彼は驚かなかった。
動揺を隠しているわけでもなかった。

私より先に気付いていたのだろうか。さっき、雅人と一緒にいたところを見たのだろうか。
妻を同伴したことを詫びているのかもしれない。
そして、私の夫が部下であったという事にも──。

私達は、このあまりの偶然に何一つ気付かず、愛欲の日々を重ねていた。

昨夜も、あんなに……。




/195ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ